【対談】訪問と病棟の言語聴覚士がお互いの仕事を語り合いました!
2026.06.11
こんにちは!
「おうちにかえろう。病院」のコラムをご覧くださり、ありがとうございます。
みなさんは、「言語聴覚士」というお仕事をご存知ですか?英語では、”Speech- Language-Hearing Therapist” 通称STと呼ばれるリハビリテーション職のひとつです(以下、リハビリと省略)。一般的には「話す」ためのリハビリを想像される方が多いかもしれませんが、実は、「食べる」ためのリハビリも扱うプロフェッショナルです。
今回は、「おうちでよかった。訪看」の訪問リハビリで活躍する滝田さんと、「おうちにかえろう。病院」の病棟リハビリで活躍する岡本さん、ふたりの言語聴覚士にお話を聞きました。
同じ言語聴覚士ですが、病棟と訪問では、どんな違いや共通点があるのでしょうか?言語聴覚士の世界を覗いてみたい方、患者さんの生活に寄り添ったリハビリに興味がある方は、ぜひ、最後までご覧ください。


普段の仕事について教えてください。
――どんな患者さんと、どんな風に関わっていますか?
岡本さん)
病棟では、摂食嚥下、つまり食べることに関する悩みを持つ患者さんが多くいます。ほかの病院で「嚥下の機能が弱ってしまい、食べることが難しいと言われました」「なんとか、食べられるようになりたい、なってほしい」といった相談をたくさんいただきます。
「食べる」って、生活そのものですよね。「この人は、何が好きなのかな」とか、「家族とどんな風に過ごしたいのかな」とか、いろんなことを想像しながら関わっています。一番大切なのは、「おうちに帰ったらどんな風に生活するんだろう」と考えて向き合っていくことだと思っています。
滝田さん)
訪問リハビリでは、もう少しいろんな悩みを持った患者さんがいます。摂食嚥下は、もちろん、失語症や高次脳機能障害、構音障害の方も多いです。ほかには、復職支援や、意外に思われるかもしれませんが歩行練習をするケースもあります。
私たちのなかに「言語聴覚士だからここまで」という感覚は無くて、「この人は、どんな人なんだろう」「この家でどんな風に暮らしているんだろう」と、身体の機能よりもまず生活のことを考えながら関わっているのが大きな特徴だと思っています。
――患者さんとは、どんな風にコミュニケーションをとっていますか?
岡本さん)
慣れてくると、つい推測しすぎてしまうことがあるので気を付けています。「言いたいのは、こういうことですよね?」と先回りしてしまいがちですが、本当は、話してみないとわからないんですよね。言葉がなくても、目線や表情や身体の動きをよく見て「今のは、YESかな?」みたいに気持ちを読み取ってコミュニケーションを取ろうとしています。
特に、病気によって急に話せなくなった人は、コミュニケーションへの不安がとても大きいので。「なるべくストレスはかけずに、必要なことを聴く」ということは、すごく意識しています。

滝田さん)
喋ることは、できなくても、患者さんは、いろんな方法で意思表示をしてくれるんですよね。嚥下に関して言えば、まず食べたい人は、口を開けてくれます。逆に食べたくない人は、頑として口を開けません…目も閉じてハッキリお断りされる場合も…!無理に食べさせることは、できません。
岡本さん)
ありますね~「今いらないのね、わかりました!」と言いながらご家族と顔を見合わせることもよくあります。
滝田さん)
はい。なるべく本人の意思を尊重するようにしますが、もし意思が確認できない場合には、ご家族とたくさん話します。もともと何が好きだったのか、そもそもどんな人柄なのか、そういう情報も大切にします。
好きなものを食べてもらうために
――印象に残っているエピソードはありますか?すごく喜んでくれたケースなど。
岡本さん)
たくさんありますよ!ときには、「市販品でもいいので、ぜひ好きなものを持ってきてください」と家族にお伝えすることもあります。病院の食事って、人によって評価が分かれていて…美味しいって言ってくださる方もいますが、特に歯が無くても食べられるソフト食は、「見た目がちょっと…」「何を食べているのかわからなくて楽しくない」という声も。食事って、見た目も大事ですから。
例えば、お喋りはできるけど、歯が無い患者さんのために、ご家族と栄養士でいろんな食べ物を探していたとき。その方がすごく気に入ったのは、隣のスーパーで買える冷たい焼き芋でした。しっとり柔らかくて食べやすかったみたいです。自分で手に持って、「はむっ」と食べられるところも好きだと教えてくれました。
あとは、プリンも人気の定番です。プリンといっても、柔らかめから硬めまで様々で、人によって好みや、身体の状態によって向き不向きもあります。本当に人それぞれなんです。


滝田さん)
そうですね、難題だったリクエストは、「カレーパン」ですかね…咀嚼がうまくできないけれど、どうしてもカレーパンを食べたいと。カレーじゃなくてカレーパンですよ?あの、パンのザクザク感を残したまま食べられるようにならないかって考え続けて、いろいろ試行錯誤して工夫しました。うまくパンの食感が残るくらいに薄く切って、ちょっとだけカレーを混ぜて、でも、もぐもぐ咀嚼しなくても食べられるくらいのバランスで。工夫した甲斐があり、とても喜んでくれましたね。嬉しかったです。
岡本さん)
しょっぱい系のリクエストは、比較的、選択肢が少ないので難しいですよね。プリンやゼリーやアイスやヨーグルトなど、甘いものが好きな人はあまり困らないのですが、しょっぱくて丁度いいものって少ない気がして…茶碗蒸しくらいでしょうか?いいものがあったら知りたいです。
ほかには、お酒が飲みたいって言う人も多いです。医師と家族と相談して、135mlの小さい缶ビールにチャレンジしたり。今は、とろみのある日本酒とかもありますね。
言語聴覚士は、コミュニケーションを支えてつなぐ仕事
滝田さん)
私たちは、病棟でも訪問でも「どうしたらこの人らしく暮らせるだろう」と考えています。「らしさ」を追求すると、いろんなアプローチがあるんですよね。好きなものを食べられることも大事ですが「家族とどんなコミュニケーションをできたら笑顔になれるのか」っていうのが結構大事な部分だと思っています。
岡本さん)
家族との関係づくりは、大切ですよね。
滝田さん)
もともと家族でも「介護する人」と「される人」になってしまうと、お互いに苦しい関係になってしまいがちです。だから、みんなが笑顔になるためのサポートを意識的に取り組んでいます。
例えば、うまく喋れない場合は、まず「ありがとう」を伝える練習から始めてみるとか。ほんの少しのきっかけで、ご本人のモチベーションや、家族の気持ちが大きく変化します。そして、私たちから家族に対して「ご本人は、今こういう原因で苛立っているかも」「うまく言えてないだけで怒ってないはず」と、状況を丁寧に伝えるだけで、関係性が変わっていくことも。双方に、お互いの気持ちの解像度を高められるような関わり方をめちゃくちゃ大事にしています。リハビリ・訓練だけじゃなくて、家族も含めた暮らしづくりをしているイメージです。
岡本さん)
それは、病棟でも同じです。家族は、「早く元気になって欲しいからとにかく食べてほしい。」本人は、「別にそんなに食べたいって思ってないし、むしろ苦痛。」そういうズレは、本当によくあります。そんなときも「なぜそう思っているんだろう?」って考えて向き合っていくと、病気や高齢で機能が低下していることをうまく受け入れられない家族の想いが見えてきたり。そこから関係性や新しい生活の再構築を模索していく。こんな風に、家族も含めて患者さん全体を支えるっていうのは、この病院でできる一番素敵な仕事のような気がします。


滝田さん)
そうですね。病気や加齢によって、以前と同じ生活には戻れないこともあります。だから「新しい生活をどうつくっていくか」をみんなで考えて前に進むんですよね。
――このチームならではのポイントってどんなところですか?
滝田さん)
数はまだ多くないですが、訪問リハビリの患者さんのなかには、介護者の休息のための短期入院という形で「おうちにかえろう。病院」へ入院される方もいます。「家ではこんな生活をしています」という情報を病院側としっかり共有します。
こういった連携のいいところは、訪問リハビリだと実際は週に1時間しか見られないのに対し、病院では24時間の様子が見られることです。意外と、病院で普段の生活が垣間見えて新しい発見があることもあります。夜はこんな表情で過ごしてるんだな、ということがわかったり。
あとは、おうちではペースト食だけど、本当はもう少し形のある食事を摂りたいときなど。おうちで試すにはリスクが高いけれど、たくさんのスタッフでサポートできる入院中に試して、集中的に評価してもらうこともできます。
これは、病棟と訪問の両方があるからこそできることだと思います。
岡本さん)
「まず本人は、どうしたいんだろう?」から考え始めるところですかね。一般的には、「リスクがあるからやめておきましょう」となるようなケースでも、「どうしたらできるかな?」ってみんなで相談して考える文化があります。もちろんリスク評価はちゃんとしますが、「危ないからダメ」では、終わらせない。
焼き芋食べたい、お酒が飲みたい、とか、そのような患者さんの想いからスタートする感じは、今では、まだなかなか珍しい環境なのかもしれません。

おわりに
――いかがでしたか?
今回は、「おうちにかえろう。病院」「おうちでよかった。訪看」それぞれで活躍する言語聴覚士のおふたりが、食べる・話すの機能回復だけではなく、その先にある自分らしい生活や、家族との時間を想像しながら働く奥深さを語ってくれました。
「おうちにかえろう。病院」「おうちでよかった。訪看」では、一緒に働く言語聴覚士を募集しています。
患者さん自身の人生や暮らしをもっと知りたいと思ったことのある人、みんなの笑顔につながるリハビリに取り組みたい人、いろんな人と関わることを面白いと思える人。この記事を読んで、当院の働き方に興味をもってくださったら、ぜひ一度お話ししてみませんか?
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